2026年 03月 15日
京都の風に吹かれて 葛飾北斎の作品を観る8・千繪の海
京都の風に吹かれて 葛飾北斎の作品を観る8・千繪の海
国立文化財機構所蔵品統合検索システムで公開の情報(複製、公衆送信、翻訳・変形等、自由に利用できるもの)を国立東京博物館よりの葛飾北斎『千繪の海』 を あくまで趣味的に観るものです。
本篇では国立東京博物館所蔵以外のものは、掲載していません。
『千繪の海』中判錦絵揃物。
天保3~4年(1832~33年)頃の作品で、「前北斎為一筆」(*葛飾北斎のこと)の落款がある。
全10図から成る揃物で、関東地方の海や川での漁労風景を収めた錦絵である。
全10図とは、総州銚子・下総登戸・総州利根川・甲州火振・宮戸川長縄・五島鯨突・待チ網・相州浦賀・絹川はちふせ の画題である。
『千繪の海』は、国立東京博物館の他に千葉市美術館・葛飾北斎美術館などが所蔵。
画題に「千絵」とあることから多数の構図を刊行する予定であった、と考えられる。
(ウィキペディアを参照)
01 千繪の海 校合摺 ●
機関管理番号・A-10569-2902

校合とは、写本・印刷物の文字や記載事項を、基準となる本や原稿と照らし合わせて、その異同を知ること。
また、それによって訂正したり相違を書き記したりすること。
従って、実際に出版された絵とは異なる場合が多い。
02 千繪の海 校合摺 ●
機関管理番号・A-10569-2903

校合摺 から 錦絵になる
↓
● 千繪の海・甲州火振(重要美術品)
17.9cm x 25.0cm
機関管理番号・A-10569-643

(*野口米次郎 著・葛飾北斎(六大浮世絵師決定版)昭和7年 より)
「千繪の海」10枚揃は文政末作品で、「富岳三十六景」と「諸国瀧廻り」との間に出たもの、或は「富岳三十六景」出版中に作られたものかも知れない。
今日 この揃物を浮世絵蒐集家家が珍重するのは稀れに市場に出るという点にあるが、恐らく その出版当時 余り世間の歓迎を受けなかったものであろうと想像される。
本図の背景は真黒で点々 星が出ている。
いうまでもなく漁師達が炬火(かがりび)を手に持って魚を捕えている図である。
漁師達は肌を脱ぎ脚絆掛けで所謂(いわゆる)北斎張りの男だといえば想像の付くように筋肉の逞しい特に両腕の誇張した恰好の連中である。
本図の浪は図案式に出来ていて、「富岳三十六景」中「両国の夕陽」や「金谷の不二」の浪に属する系統のもので、北斎はこの系統の浪を その後「百人一首」や「在原業平」「参議篁」「春道列樹」の図などに使い、また長絵判「詩歌寫眞鏡」の「春道列樹」や「木賊苅」などにも用いている。
北斎の浪は飛んで散乱する時に蠑螺(さざえ)のようになり、それが鎮まった場合には半円球の平行方に並べている。
本図の色は背景を墨にしたが為に樹木の青や浪の紺や山の黄との対照が極めて明瞭である。
山上に立っている松の木の幹と前景の漁師の皮膚とが薄紅に縫ってある。
外題の赤が萬緑野中の紅一点という訳だ。
色の効果は決して悪くない。
● 千繪の海・宮戸川長繩
機関管理番号・A-10569-642

(*野口米次郎 著・葛飾北斎(六大浮世絵師決定版)昭和7年 より)
季節は初夏の候で柳は もうすっかり葉を出している。
微風がふいているので それが動揺し、川の波も山なりに波打っている。
本図に よくその趣きが出ている。
初夏に相応しい緑と藍の図であって、前景の縁台や船に薄紅と黄とが塗ってある。
一種の新鮮なすがすがしい感じを与える作品である。
背景の向う岸にマッチ箱式に家屋を並べた具合は、北斎がこの2、3の作品に用いたものである。
● 千繪の海・五島鯨突(ごとうくじらつき)
機関管理番号・A-10569-646

五島は長崎県(肥前国)の西端にあります。
銛(もり)を撃ち込む捕鯨は、往時、紀州熊野灘や土佐湾などでも行われていました。
● 千繪の海・待チ網(まちつな)
機関管理番号・A-10569-644

待網漁は、一般に網を張って魚が来るのを待ち捕らえるのですが、本図はどう見ても掬い(すくい)捕っているように見えます。
急流で段々と下へ流れているので、魚も方向感覚が狂ってしまうのかも。
● 千繪の海・蚊針流(かばりながし)
機関管理番号・A-10569-6455

釣師はシロウトでしょうか、それとも漁師でしょうか。
狙う魚は、鮎、枡、それとも鮠(はや) でしょうか。
その正解は、絵師も分からなかったのかも知れませんね。
京都の風に吹かれて 葛飾北斎の作品を観る9 に続きます。

